1987年以来毎年テーマを設定しているエルメス。1996年のテーマは『音楽』。この年に発表されたカデナは竪琴、カレは「球体が奏でる音楽」でした。カレにはバッハとシューマンによる楽譜と中央にメディチ家のヴィオラが描かれています。ラッテちゃんが巣材にしているリボンも音楽の年のおリボンですね。

音楽と数学を結びつけたストラディヴァリは、イタリア・クレモナ出身の弦楽器作りの名匠であった。彼は古代にあったピタゴラスの考え方とその定理を応用して、音楽とは単なる技法の芸術ではなく、本質的には科学であることを証明した。

1690年に製作されたストラディヴァリの「メディチ家のヴィオラ」が、この絵では自由な発想で構図に組み込まれているが、それでも『球体が奏でる音楽』として、ダイヤモンドのような音が聴こえてくる。球体から生まれたその音が耳に届くとき、幾何学の力にめまいを覚える。